アナグラムで思いだしたこと

人の名前をアナグラムにして遊んでいたら、昔のことを思いだした。

大学2年生で、ソシュール言語学を勉強した。おもしろかったから、いろいろ本を読んだ。さらに興味をもったのが、アナグラムだった。ソシュールは、あれほど体系的に言語を分析しているにもかかわらず、晩年、ギリシア詩のアナグラム研究に没頭している。言ってみれば、言葉遊び。しかしそこに、芸術における無意識の問題があるらしい。
大学ではラテン語ギリシア語も勉強して、アナグラムのことを考えた。わかんなくなると、お酒を飲んで、寝た。ダックジャニエルをよく飲んだ。
春休みは、思いのほか長かった。
お酒を飲んでも眠れなくなって、やがて食べるのも億劫になって、いろんなことが面倒くさくなった。ちょっとたいへんだった。そんなことを思いだした。
という、一連を、すっかり忘れていたのだけれど、さっき、アナグラム遊びで思いだして、まだ、喉にゆで卵をつまらせたみたいに、びっくりしている。
春休みが終わると、なんとか生活は元に戻った。
あれから15年くらいが過ぎているのだけれど、その間、ソシュール言語学が、ラングとかパロールとか、役に立ったことはいちどもない。
昨日、奥さんに、「圧力鍋で玄米を炊く方法を教えてやるから、次からできるようになって」と上から目線で言われて、「じゃあ、そのあと、微分積分教えてやるよ」と言ったら、「それ、役に立たないから」と一蹴された。そういうことらしい。