猪瀬直樹のこと―青春譜

まったく、と言っていいほど、政治のことはわかりませんが、猪瀬直樹がたいへんらしい。
猪瀬直樹の書いた本は、中学生だったか、高校生だったか、けっこう、真剣に読んだ。おもしろかった。『ミカドの肖像』とか『土地の神話』とか。
好きだったのは、『マガジン青春譜―川端康成と大宅壮一>』、『ペルソナ―三島由紀夫伝』、『ピカレスク 太宰治伝』の三部作で、しかし僕は、川端なんて1冊、2冊しか読んだことないし、三島は読まず嫌いだし、太宰はだいたいぜんぶ読んだけどそれほど好きじゃないんだけど、『マガジン』はとりわけ感動的で、『ペルソナ』、『ピカレスク』も、お金を払って買う本として、じゅうぶんにおもしろかった。
当時は、いま以上にお金がなかったから、買って読んだときのうれしさを、よくおぼえている。
親が買っていた『週刊文春』の連載「ニュースの考古学」も、きちんと読んでいた。びしっとしたことを言う人だな、と思っていた。
「役職」ってのは、その人を無能にするためにあるものだという人もいて、僕の個人的な経験では、それは半分以上当たっていると思うのだけれど、要は、「自由さの欠如」、「追い詰められる(ようにできている)」ということなんじゃないか。必然なんだと、思う。
都知事であろうと、中小企業の管理職であろうと。
このあいだ、読んでいた本、曽野綾子日本財団9年半の日々』で、曽野さんが、過去に2回ほど大臣就任を求められたけれど断ったということが、さらっと書いてあって、ああ、このひとは、ほんとうにいい意味での怠け者なんだと思った。「やりたい」とか「断れない」とか、ましてや、「自分にしかできない」なんて、思わないんだな。
立派なことだ。
次回、曽野さんのこと、書きます。
あー、猪瀬さんは、辞任する方向らしいけど、辞めちゃったほうがよいよ。そもそも、石原とつるんでたのが、嫌だった。僕が石原を嫌いなのは、政策うんぬんではなくて(知らないし)、小説がおもしろくないから。
猪瀬直樹、いま、67歳。僕が、彼の著作を読んでいたのは、20年も前のことで、猪瀬さんは50歳ちょっと前か。そんなもんか、とも思う。
マガジン青春譜―』は、感動的におもしろい。いま読んだら、また、どう思うかわからないけれど。そう思うと、曽野さんの本は、いつでもだいたい、おもしろいな。