水村美苗『母の遺産』

水村美苗『母の遺産』を読んでいる。
おもしろくておもしろくて、多和田葉子『雪の訓練生』以来の「昂奮」。 
いま、五十四「歌留多遊び」。読み進むのが嫌で、読むのに集中できないという、おかしな逆説。
三十六「ちりあくた」の冒頭

眠りが甘露だったのは昔のことである。

「ひやあーっ」って、「アッと驚くタメゴロー」みたいに、ほんとうにのけぞって、にやにやしてしまう。
読売新聞の土曜朝刊で連載されていたらしいのだけれど、土曜日の朝が、こんな一節を読むことで始まったとしたら、どんなに夢見がちで、気だるくいられる土曜日だろう、と思う。