オタール・イオセリアーニ「汽車はふたたび故郷へ(Chantrapas)」

イオセリアーニは「素敵な歌と舟はゆく」が大好きなんだけれど、今回の「汽車はふたたび故郷へ」も、同じ雰囲気を醸している。
イオセリアーニは、グルジア出身の映画監督。
「彼の作品は旧ソ連下で公開禁止であったため、1979年にフランスに移住。1982年よりTV作品を始めとしてパリを中心に活動を再開し、寡作ながらも今なお活動を続けている。」と、Wikipediaにはある。
「汽車はふたたび故郷へ」は、若き日のイオセリアーニの実体験に基づいた内容らしく、「グルジアで映画がつくれないため、パリに出て、制作にとりくむのだけれど・・・」というはなし。
無知を晒すようだけれど、僕は、「旧ソ連」について、曖昧にしか知らないし、「グルジア」という国がどこにあるかも知らない。

ああ、遠いね。「旧ソ連」の範囲も、だいたい、思いだした。世界史。
 
「汽車はふたたび故郷へ」を観ながら、思い浮かんだこと。疑問点など、箇条書き。
・イオセリアーニは、「素敵な歌と舟はゆく」とか、「月曜日に乾杯!」、「ここに幸あり」など、日本でも、それなりに評価を得ているが、やはり、知名度は低い。カウリスマキキアロスタミほどではないのは、どうしてなのか。
・ドアではなく、窓から出入りするシーンが多いのはなぜか。
「素敵な歌と〜」でも、たびたび、登場するアカペラの歌唱は、どういうジャンルのものなのか。(グルジアの民謡のようなもの?)←これ、わかる人いたら、ほんとうに教えてください。
Otar Iosseliani - Adieu, plancher des vaches!「素敵な歌と舟はゆく」

右は大富豪ながらもだらしない酒飲み役のイオセリアーニ本人、左はイオセリアーニが屋敷に招き入れた浮浪者!が、酒を飲みながら、じつに楽しそうにうたうシーンが忘れられない。
・「汽車は〜」の原題は、「Chantrapas(シャントラパ)」というのだけれど、フランス語の辞書にはでていない。どういう意味?
 →これはわかった。「chanter(歌う)」の三人称単数の単純未来「chantra」に、否定の「pas」がついたもの。イオセリアーニのインタビューに出ていた→

彼は歌うようにはならないだろうという意味です。[・・・]その後言葉が独り歩きして、あなたはシャントラパだとロシア語で言うようになりました。それが普通名詞になり、概念としては役立たず者のことをシャントラパという風になったのです。私の経験から、シャントラパに属する人たちは、全員愛すべき素晴らしい人たちです。シャントラパという言葉を覚えてください。シャントラパは大臣でもない、ビジネスマンでもない。お金を稼ぐこともない。でもシャントラパは親切で優しい人たちです。

こんなところかしら。
「素敵な歌と舟はゆく」は、酒と音楽が好きで、自由を謳歌して生きたい男性には、ぜひ観てほしい作品で、生前の親父と、いっしょに観たのを思いだした。
というか、観終わったあとの、親父のコメントが忘れられなくて、「映画をつくるなら、こういう作品も観ておくべきだな」。
「な、なんだそりゃ」って、何日間か、思いだし笑いした。